会社を辞める前に健康保険と年金で確認すること。任意継続・国保・扶養・法人社保の整理

会社を辞めて起業する前に確認したい健康保険と年金を整理します。任意継続、国民健康保険、扶養、国民年金、法人設立後の社会保険を分けて解説します。

会社を辞めて起業しようとしているときに、健康保険や年金の話を聞くと急に不安になります。

退職時には、「任意継続」「国民健康保険」「扶養」「国民年金」「厚生年金」「法人の社会保険」といった言葉が一気に出てきます。

どれも大事そうです。ただ、初めて聞くと何の話なのか分かりにくいです。健康保険の話なのか、年金の話なのか、法人を作った後の社会保険の話なのかが混ざって見えます。

この記事では、会社を辞める前に確認したい健康保険と年金を整理します。目的は、この記事だけで加入先を決めることではありません。退職日、法人設立日、役員報酬開始日をもとに、協会けんぽ、市区町村、年金事務所、社労士や税理士に何を確認するかを見えるようにすることです。

この記事は2026年6月24日時点の公式情報をもとにしています。制度や保険料、手続きは変わることがあるため、実際の手続き前に最新情報を確認してください。

*この記事は一般的な情報整理であり、個別の社会保険、年金、税務、労務の助言ではありません。実際の手続きや加入可否、保険料、扶養判定は、協会けんぽ、市区町村、年金事務所、社労士などに確認してください。

まず結論

会社を辞める前に、まず分けるべきなのは「健康保険」と「年金」です。任意継続は健康保険の制度であり、厚生年金を退職後も続ける制度ではありません。

種類退職後に考えること相談先
健康保険任意継続、国民健康保険、家族の扶養のどれにするか協会けんぽ、市区町村、家族の勤務先
年金国民年金第1号または第3号への切替が必要か市区町村、年金事務所、配偶者の勤務先
法人設立後の社会保険法人として健康保険・厚生年金保険に入る必要があるか年金事務所、社労士

退職時に「前職の保険を2年間継続できる」と説明された場合、それは多くの場合、健康保険の任意継続の話です。健康保険の空白をどうするか、年金の空白をどうするか、法人を作った後に社会保険へ入るか。この3つを分けて確認する必要があります。

最初に作るメモは、次の4つで十分です。

メモすることなぜ必要か
退職日退職日の翌日が、健康保険や年金の切替確認の起点になる
現在の健康保険協会けんぽか健康保険組合かで、任意継続の確認先が変わる
扶養している家族子どもや配偶者の健康保険も同時に確認が必要になる
法人設立予定法人の健康保険・厚生年金保険にいつ入るか確認が必要になる

退職時に出てくる説明を分解する

退職前後には、いくつかの制度説明が一度に出てきます。混乱しやすい言葉を、健康保険と年金に分けて読むと整理しやすくなります。

「退職後は全額負担になる」

これは、健康保険の任意継続で保険料が上がる話として理解できます。協会けんぽは、任意継続の保険料について、退職後は事業主負担分も負担するため、退職時の健康保険料の2倍になると説明しています。ただし、上限や都道府県差などがあります。

「退職日の翌日から加入したほうがよい」

これは、健康保険と年金の空白を作らないように、退職日の翌日を起点に手続きを確認したほうがよい、という意味なら理解できます。ただし、健康保険と年金は別です。

「前職の保険加入を2年間継続できる」

これは、健康保険の任意継続の話です。協会けんぽの任意継続は、退職後の健康保険の選択肢の一つで、被保険者期間は2年間とされています。

「厚生年金は退職後も加入している状態がよい」

ここは注意が必要です。任意継続は健康保険の制度であって、厚生年金を継続する制度ではありません。会社を退職してしばらく次の会社に入らない場合や自営業者等になる場合は、国民年金第1号被保険者の手続きが必要になることがあります。

つまり、退職時の説明は次のように分けて読むのが安全です。

説明主に何の話か
任意継続健康保険
国民健康保険健康保険
家族の扶養健康保険。配偶者の扶養に入る場合は年金第3号も関係する
国民年金第1号・第3号年金
法人の健康保険・厚生年金保険法人設立後の社会保険

健康保険と年金は別の話

退職前にまず理解したいのは、健康保険と年金は別の制度だということです。

会社員のときは、給与から健康保険料と厚生年金保険料がまとめて引かれているので、ひとかたまりに見えます。でも退職すると、分けて考える必要があります。

会社員時代退職後に見るもの
健康保険任意継続、国民健康保険、家族の扶養
厚生年金国民年金第1号、第3号、または次の厚生年金
会社の社会保険法人設立後に新規適用が必要か

「健康保険任意継続に入ったから、年金も大丈夫」とはなりません。任意継続を選んだ場合でも、年金側は別に確認する必要があります。

退職後の健康保険は3択

退職後の健康保険は、主に3つの選択肢から確認します。協会けんぽも、退職後の健康保険について、健康保険任意継続、国民健康保険、家族の健康保険の被扶養者という3つの選択肢を示しています。

選択肢ざっくりした内容主な確認先
任意継続退職前の健康保険を退職後も続ける協会けんぽなど加入していた保険者
国民健康保険市区町村の国民健康保険に入る住んでいる市区町村
家族の扶養家族の健康保険の被扶養者になる家族の勤務先

どれがよいかは、人によって違います。保険料、家族構成、前年所得、扶養条件、法人設立の時期、役員報酬の有無で変わります。

退職前にやるべきことは、どれか一つを思い込みで決めることではありません。3つの選択肢を並べて、保険料と条件を確認することです。

いま扶養に入っている家族がいる場合

自分の健康保険に、子どもや配偶者などの家族が被扶養者として入っている場合は、本人の手続きだけで考えないほうがよいです。退職後に家族の健康保険も変わる可能性があるためです。

会社を退職すると、自分が会社の健康保険の被保険者ではなくなります。そのため、現在扶養に入っている家族の健康保険も、あわせてどうするか確認する必要があります。

たとえば、子どもが自分の扶養に入っている場合、退職後の選択肢は大きく次のように整理できます。

選択肢家族の扱いで確認すること
任意継続家族を被扶養者として継続できるか、必要書類は何か
国民健康保険世帯として加入する場合の保険料がどうなるか
配偶者など別の家族の扶養子どもや自分が、その家族の健康保険の扶養条件を満たすか
法人設立後の社会保険法人で健康保険に入った後、家族を被扶養者にできるか

協会けんぽの任意継続では、資格取得と同時に家族を被扶養者として手続きする場合、生計維持関係を証明できる書類の添付が必要な場合があると案内されています。

国民健康保険にする場合は、家族を「扶養に入れる」という考え方ではなく、世帯の加入や保険料として見ることになります。保険料は市区町村や前年所得、世帯構成などで変わるため、住んでいる市区町村に確認する必要があります。

退職前に確認したいのは、次の点です。

  • いま誰が自分の健康保険の扶養に入っているか
  • 任意継続にした場合、その家族も被扶養者として継続できるか
  • 国民健康保険にした場合、世帯全体の保険料はいくらになりそうか
  • 配偶者など別の家族の健康保険に入れる可能性があるか
  • 法人設立後、自分の法人の健康保険に家族を被扶養者として入れられるか
  • 子どもの医療証や自治体の助成制度に影響がないか

子どもがいる場合は、保険証や資格確認書が切り替わるタイミングも気になります。病院にかかる予定がある、自治体の子ども医療費助成を使っている、保育園や学校の書類が必要になる、という場合は、早めに市区町村へ確認したほうが安心です。

任意継続とは何か

任意継続は、退職前に加入していた健康保険を、退職後も一定期間続けられる制度です。退職時に「前職の健康保険を2年間続けられる」と説明される場合、多くはこの制度を指します。

協会けんぽの場合、主な条件は次のように案内されています。

項目内容
加入条件退職日までに被保険者期間が継続して2か月以上あること
手続き期限退職日の翌日から20日以内
被保険者期間2年間
保険料退職後は事業主負担分も自分で負担するため、退職時の健康保険料の2倍が目安。ただし上限や都道府県差がある
喪失する場合就職して他の健康保険の被保険者になった、保険料を納付期限までに納付しなかった、任意継続をやめる申し出をした、など

退職時に会社から「任意継続しますか」と聞かれることがあります。ここで即答する前に、任意継続、国民健康保険、家族の扶養、法人社会保険への切替予定を並べて確認したほうが安全です。

そのときに確認したいのは、次の点です。

  • 自分は任意継続の条件を満たしているか
  • 20日以内の手続きに間に合うか
  • 任意継続の保険料はいくらになりそうか
  • 国民健康保険の保険料はいくらになりそうか
  • 家族の扶養に入れる可能性はあるか
  • 法人設立後に社会保険へ入る予定があるか
  • 2年後、または途中で法人社会保険へ移る場合の出口は何か

任意継続は「2年間、退職前の健康保険を続けられる制度」と理解すると分かりやすいです。ただし、2年後には終わります。途中で法人として健康保険・厚生年金保険に入る場合もあります。

つまり、任意継続を選ぶなら「今どうするか」だけでなく、「いつ次の保険に移るか」も確認しておく必要があります。

国民健康保険とは何か

国民健康保険は、住んでいる市区町村で加入する健康保険です。

協会けんぽの任意継続ページでも、国民健康保険の手続き先は住んでいる市区町村の国民健康保険担当課とされています。

国民健康保険の保険料は、市区町村や前年所得、世帯人数などによって変わります。会社員時代の健康保険料や任意継続の保険料と単純比較できないことがあります。

退職前に市区町村へ確認したいのは、次のような点です。

  • 退職後に国民健康保険へ入る場合の手続き
  • 保険料の概算
  • 必要書類
  • 加入日と保険証・資格確認書まわり
  • 減免制度があるか

任意継続と国民健康保険は、保険料だけでなく、手続き期限や家族の扱いも含めて比較したほうがよいです。

家族の扶養に入れる場合

家族が会社員などで健康保険に入っている場合、条件を満たせば、その健康保険の被扶養者になれる可能性があります。

協会けんぽの任意継続ページでも、家族の健康保険の被扶養者になる選択肢が示されています。

ただし、扶養に入れるかどうかは、収入見込みや家族の健康保険の条件によって変わります。自分で判断せず、家族の勤務先へ確認する必要があります。

また、年金側も関係します。

日本年金機構は、退職して配偶者が加入する健康保険の被扶養者となる場合、国民年金第3号被保険者の手続きを行うと説明しています。

健康保険の扶養と、年金の第3号はセットで確認したほうがよいです。

年金は国民年金第1号・第3号を確認する

退職後に厚生年金を外れる場合、年金の手続きも必要になります。

日本年金機構は、健康保険および厚生年金保険に加入している被保険者が適用事業所を退職し、しばらく次の会社に入らない場合や自営業者等になった場合、その期間は国民年金第1号被保険者の手続きを行い、国民年金保険料を納める必要があると説明しています。

また、退職して配偶者が加入する健康保険の被扶養者となる場合は、国民年金第3号被保険者の手続きを行うとされています。

整理すると、こうです。

状況年金の確認
退職後、会社に入らず起業準備する国民年金第1号の手続きが必要か確認
配偶者の扶養に入る国民年金第3号の手続きが必要か確認
すぐ別の会社や自分の法人で社会保険に入る厚生年金保険の資格取得時期を確認

任意継続を選んでも、年金は別です。

ここは何度でも確認したいところです。健康保険の任意継続に入っただけでは、厚生年金に入り続けることにはなりません。

法人設立後は社会保険の加入義務を確認する

会社を辞めた後に個人事業主として活動するのか、法人を設立するのかで、社会保険の見方が変わります。

日本年金機構は、常時従業員を使用する法人事業所について、事業主のみの場合を含め、厚生年金保険および健康保険の加入が法律で義務づけられていると説明しています。

また、新規適用届は、事実発生から5日以内に提出する手続きとされています。

ここで起業者が確認したいのは、次の点です。

  • 法人設立日
  • 役員報酬をいつから設定するか
  • 社会保険の新規適用がいつ必要になるか
  • 健康保険任意継続や国民健康保険から、法人社会保険へいつ切り替わるか
  • 年金側が国民年金から厚生年金へいつ切り替わるか

ひとり会社でも、「自分だけだから関係ない」と考えないほうがよいです。

法人を作るなら、税理士だけでなく、必要に応じて社労士や年金事務所に確認するのが安全です。

退職前に確認するチェックリスト

退職前に、次のメモを作っておくと相談しやすくなります。

確認することメモ
退職日退職日の翌日が手続きの起点になる
現在の健康保険協会けんぽか、健康保険組合か
扶養している家族子ども、配偶者など、現在の被扶養者を確認する
任意継続の可否被保険者期間2か月以上、20日以内の期限
任意継続の保険料退職前保険料の2倍目安、上限、都道府県差
国民健康保険の保険料市区町村で概算確認
扶養の可能性家族の勤務先に条件を確認
年金の切替国民年金第1号か第3号か
法人設立予定設立日、役員報酬開始日、社会保険新規適用
相談先協会けんぽ、市区町村、年金事務所、社労士、税理士

退職日が近づくほど、手続きの余裕がなくなります。

特に任意継続は20日以内という期限があるため、退職後にゆっくり調べようとすると間に合わない可能性があります。

退職後すぐにやること

退職後は、次の順番で確認すると混乱しにくいです。

  1. 健康保険をどうするか決める。
  2. 任意継続なら20日以内に手続きする。
  3. 国民健康保険なら市区町村で手続きする。
  4. 扶養なら家族の勤務先に手続きを確認する。
  5. 年金を国民年金第1号・第3号のどちらで手続きするか確認する。
  6. 法人設立済み、またはすぐ設立するなら、法人社会保険の新規適用を確認する。

ここで大事なのは、健康保険の手続きと年金の手続きを片方だけで終わらせないことです。

任意継続をしたら健康保険はひとまず整理できます。でも年金は別に確認が必要です。

国民健康保険に入ったら健康保険は整理できます。でも年金は国民年金第1号の手続きが必要か確認する必要があります。

よくある質問

任意継続に入れば、厚生年金も続きますか?

続きません。

任意継続は健康保険の制度です。厚生年金を退職後も継続する制度ではありません。退職後に会社に入らない場合や自営業者等になる場合は、国民年金第1号の手続きが必要になることがあります。

退職前の健康保険を2年間続けられるとはどういう意味ですか?

健康保険の任意継続のことです。

協会けんぽの任意継続では、退職日までに被保険者期間が継続して2か月以上あること、退職日の翌日から20日以内に手続きすることなどが条件です。被保険者期間は2年間とされています。

ただし、2年後には終わります。途中で法人社会保険へ移る場合もあります。出口も一緒に確認しましょう。

任意継続と国民健康保険はどちらが安いですか?

人によります。

任意継続は退職時の健康保険料の2倍が目安ですが、上限や都道府県差があります。国民健康保険は市区町村や前年所得、世帯人数などで変わります。

退職前に、任意継続の概算と国民健康保険の概算をそれぞれ確認するのがよいです。

法人を作ったら、すぐ社会保険に入る必要がありますか?

個別判断が必要です。

日本年金機構は、常時従業員を使用する法人事業所について、事業主のみの場合を含め、厚生年金保険および健康保険の加入が法律で義務づけられていると説明しています。

法人設立日、役員報酬開始日、実態により確認が必要になるため、年金事務所や社労士に相談してください。

まとめ

会社を辞める前に、健康保険と年金は分けて確認したほうがよいです。

退職後の健康保険には、任意継続、国民健康保険、家族の扶養という選択肢があります。任意継続は、退職前の健康保険を最長2年間続けられる制度ですが、厚生年金を続ける制度ではありません。

年金は、退職後に会社に入らないなら国民年金第1号、配偶者の扶養に入るなら第3号、法人社会保険に入るなら厚生年金という形で、別に確認する必要があります。

まずやることは、退職日を起点に、健康保険の選択肢と年金の切替を表にすることです。

そのうえで、協会けんぽ、市区町村、年金事務所、社労士、税理士に確認すれば、「何も分からず焦る」状態からはかなり抜け出せます。